保育園運営が民間事業者へ移管・委託される公立保育園が増加している。横浜市では訴訟が保護者から提起され地裁では「民間移管は違法」と判断され「1世帯あたり10万円を支払え」と命じる判決をくだしたが、控訴し現在係争中である。
民間に移管・委託する当該団体の理由は、「経費がかかり過ぎる」現在の保育園運営を「経費が少なくて済む」保育園運営に変えたいということである。保育園運営で一番お金が掛るのは70~80%を占める保育士等の人件費である。
保育園には保育士のほかに子どもの健康管理を行う看護・保健担当の職員、給食を担当する栄養士・調理員、施設整備を担当する用務員等が配置されています。保育士については、それぞれの団体の考え方で保育園の規模に応じて子どもと保育士の割合に加えて数名の保育士を、休暇を取ったり、風邪をひいたりして休んだときにも保育ができるように加配していますが、それは必要なことだと思います。保育園運営経費のうち70~80%を占める保育士等の人件費が高いので民間事業者へ移管・委託を進めようとしているわけです。ではどの位経費が高いのか。
横浜市児童福祉審議会意見具申「保育サービスの充実に向けて保育所のあり方と行政の役割はどうあるべきか」によれば「定員120名規模の保育所で年間の運営費を公立・民間ともに同じ条件(保育時間・保育サービス・職員配置など)でモデル的に試算すると民間保育所は公立保育所に比べ、運営費が17%下回っています。」としており、横浜市の試算では3年間で2億7,700万円、18%節減できたとしています。
では、なぜ人間費が高いのか。公立保育園で働く保育士等の職員の給与の位置づけに問題があるのです。横浜市の場合も保育園で働く保育士等の職員のほとんどが、行政職員と同じ位置づけになっています。言い換えるなら「年功序列」の給与体系の上に立っているからです。これは、公務員給与制度に言えることですが、年功序列を変更する必要があると思います。スキル・役割・責任に応じた給与制度に改めるべきだと思います。例えば、保育士が学校を卒業し資格を取得して公立保育園に就職します。学校で勉強したことでひとり立ちして保育できるかといえば、そんなことはありません。ひとり立ちするまでには数年かかるでしょう。しかし、ひとり立ちした後もスキルが毎年高まるかと言えばそんなこともありませんが、給与はスキルとは関係なく毎年上がるシステムになっています。その結果、ある市の保育園職員の1人平均の年間人件費が800万円を超えているという現実があります。平均ですから安い職員もいれば、高い職員もいるわけですが、平均としたら高いと思います。
民間会社では、営業努力がなければ1円の収入も得られませんが、地方自治体は努力しなくとも毎年度、税金が納入されその中から職員の給料が支払われます。ですから、一生懸命働こうが、多少のんびり仕事をしようが「査定」がないので「公平・平等」を旨とする給与制度で不満が出ないようにするには、全体を高くしておくことだと「経験的」に理解しているのだと思います。例えば、保育園職員の給与表を別につくって民間との比較や地域の民間の給与情況を参考にするとすれば、別な展開があるかもしれません。しかしそうはなっていないのです。けれども「ワーキングプア」を作れと言っているわけではありません。1人平均の年間人件費が800万円はいかにも高いといっているのです。
地方自治体が人件費のきちんとした見直しをしない限り、公立保育園が民間事業者へ移管・委託されるのは止むを得ないことです。
民間事業者へ移管・委託されるとしても、保育園は物を扱っているわけではなく子どもの人生の大切な成長期を預かっていることを考え慎重に行ってもらいたいと思います。行政は年度区切りで考え、全職員が入れ替わるような移管・委託を行うべきではありません。子どものことを考え職員の入れ替えには1年くらいかけて緩やかに行うことが必要です。子どもが新しい職員になじむ時間をしっかりとるべきです。
また、市町村は移管・委託した保育園について、移管・委託しっぱなしでなく、しっかり保育内容についてチェックする体制を経験豊かな保育士等の職員集団でつくり、点検することが必要です。人的なサービスの特徴は、サービスの現場で内容を確認しなければ、後からは確認のしようがないことです。そこで、保育内容について2週間から1月程度保育園に入って保育内容について確認することが必要で、悪ければ改善を求めるか契約を解除することが必要です。そうした結果を、通園している園児の保護者に積極的に情報公開することが必要で、こうしたことを通じて保護者が安心して子どもを預けることができると同時に情報の共有を進めることで、良い保育園作りができると思います。移管・委託しっぱなしの「丸投げ」では、いかに費用が安いとは言え安心できるものではありません。
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